ラスベガスでのNBAサマーリーグ5試合を終えて、富樫勇樹はいったん帰国した。夏の間は日本代表活動に参加して、秋からの再渡米に備える予定だという。ここで今いちど、彼がサマーリーグ5試合で成し遂げたことを振り返り、NBA関係者は彼のことをどう受け止めたのかを検証してみたい。
Yoko Miyaji
ラスベガスでのNBAサマーリーグ最終戦となるフェニックス・サンズ戦を前に、ダラス・マーベリックスの2人のスターティング・ガード、ゲル・メケルとクリス・ゴールディングがチームを離脱した。
サマーリーグは、ほかにはない独特の雰囲気を持つ舞台だ。チームもファンも将来性を求めて見に来ているだけに、たとえ無名の選手でもインパクトのある活躍を見せると、その情報はあっという間に会場中に広まる。7月16日(ラスベガス時間)のシャーロット・ホーネッツ戦での富樫勇樹の11分弱で12点の活躍も、そんな類の出来事だった。
ラスベガスのNBAサマーリーグは、現地7月16日から後半のトーナメント戦に突入した。ダラス・マーベリックスはトーナメント1回戦でシャーロット・ボブキャッツと対戦した。
ラスベガスのNBAサマーリーグ4日目(現地7月14日)、ダラス・マーベリックスはトロント・ラプターズと対戦した。
NBAファイナルが終わって1カ月もしないうちに始まるサマーリーグは、たいていの場合、レギュラーシーズン中に成績が低迷したチームが輝く"逆さリーグ"だ。
サマーリーグ2日目(現地12日)、ダラス・マーベリックスはミネソタ・ティンバーウルブズと戦い、勝利をあげたが、その一方で富樫勇樹にはいきなり試練が訪れた。
会場は、サマーリーグ独特の熱気と期待感にあふれかえっていた。ラスベガスで、現地7月11日から11日間にわたって行なわれるNBAサマーリーグ初日。第3試合でドラフト1位指名のアンドリュー・ウィギンスと、2位指名のジャバリ・パーカーが登場するとあって、熱心なファンが早々から席を埋め尽くしていたのだ。その中で、第1試合のダラス・マーベリックス対ニューヨーク・ニックスが始まった。
6月15日、サンアントニオ・スパーズが優勝を決め、NBAの2013-14シーズンが終わった。いつものことながら、終わってしまうとシーズンはあっという間だ。優勝が決まった後は、バタバタと取材や原稿書きに追われるため、余計に感傷にふける間もなく通り過ぎていく。
記者会見場に出てきたカワイ・レナードは、すぐ前にMVPトロフィーが置かれていなければ、とても初優勝し、ファイナルMVP受賞したばかりの選手とわからないほど、ふだんと変わらない表情をしていた。
NBAファイナル第4戦、スパーズが予想外の圧勝で、優勝に王手をかけた。第3戦前半のように7割を超える確率でシュートを決めたわけではなかったが、傍から見ている分には第3戦以上に圧倒的な強さで、ヒートの選手たちの心を折った。ヒートも、対スパーズの対策を練って修正してきたはずだが、スパーズのほうがすべての面でヒートを上回っていたのだった。
NBAファイナル第3戦、サンアントニオ・スパーズに勝利を引き寄せたのはカワイ・レナードの、貪欲で、アグレッシブなプレイだった。試合開始直後にドライブインからファウルをもらったのを皮切りに、第1クォーターだけで16点、試合が終わるまでに自己最多の29点を入れた。フィールドゴールも13本中10本を決める効率のよさで、リバウンドも7本取り、ディフェンスではレブロン・ジェイムスを後半わずか6点に抑えている。
つくづく、バスケットボールは人間がするスポーツなのだと思って見ていた。わかっていても、気を付けていてもミスしたり、思ったようなプレイができないことがある。完璧でないからこそ、勝負は面白い。
グレッグ・ポポビッチ(サンアントニオ・スパーズ)は、昔かたぎの、オールドスクール・コーチだ。そんな彼が、NBAファイナル第2戦前日のメディアセッションで何気なく口にしたことが興味深かった。
このNBAファイナルでのティム・ダンカンは、いつもより目が鋭く、言葉に力があり、表情が豊か……なような気がする。こちらの勝手な思い込みかもしれないし、去年のNBAファイナル第7戦終盤、悔しそうに両手で床を叩いた姿が、目の奥に残像として残っているからかもしれない。それでも、去年、優勝の一歩手前で敗れた経験によって、ダンカンがいつも以上に強い決意で試合をしていることは想像に難くない。