■新井監督が謝罪するほどの大敗
交流戦終盤に突入しているプロ野球は、19日も6試合が行われた。最大のトピックは日本ハム・北山亘基が巨人相手に9回1死までノーヒットノーランの快投を見せたことだろうが、負けず劣らず話題になったのが広島の16失点だ。
広島はカード勝ち越しをかけソフトバンクと対戦したが、先発のジョハン・ドミンゲスが初回に4点、4回にも2点を失うなどピリッとしない投球を見せる。ただ、5回に代打起用された中村奨成が2ランを放ち、逆転勝利へ向け反撃開始かと思われた。
ところが、6回に起用された2番手の益田武尚が7回に3点を奪われると、9回には3番手・長谷部銀次が6失点、4番手・岡本駿が1失点と大誤算。打線も最後まで得点を奪えないまま、終わってみれば今季ワーストの16失点で大敗を喫する結果となった。
広島を率いる新井貴浩監督は試合後、ファンに向けて謝罪の言葉を口にしたという。チームにとってはかなりショッキングな敗戦になってしまったようだが、球界の歴史を振り返ると、今日の広島がマシに見えるレベルの大量失点を喫したチームがある。
■初回から終盤まで勢い止められず
当事者となったのは、現在のオリックス・バファローズの前身であるオリックス・ブルーウェーブ。同チームは2003年8月1日、ソフトバンクの前身である福岡ダイエーホークスと対戦した。その試合で歴代2位、プロ野球が2リーグ制となった1950年以降では史上最多の29失点を喫している。
同戦のブルーウェーブは先発のマック鈴木が初回からつかまり、1死も取れないまま5失点で降板。後を受けたリリーフ陣も勢いづいたダイエー打線を止められず、3回までに実に23点を失った。前述の広島の16失点を、序盤の段階で優に超えたことからも状況の深刻さがうかがえるだろう。
ブルーウェーブは4回からマウンドに送った本柳和也が、ダイエー打線を8回まで2失点に抑える奮闘を見せた。しかし、9回に4失点を喫し力尽きると、その裏に打線が完封負けを辛くも阻止する1点を記録し歴史的な大量失点試合は幕を閉じた。
■悪い意味で相手と噛み合った?
球史に残る屈辱を味わった形のブルーウェーブだが、2003年はプロ野球史上ワーストのチーム防御率(5.95)、失点数(927点)を記録するなど、投手陣が壊滅的なレベルで崩壊し断トツの最下位に沈んだ。一方、ダイエーは3割打者が6名、100打点をクリアした打者が4名出るほどの強力打線を擁し、チーム打率(.297)ではプロ野球記録を樹立。圧倒的な打力でパリーグ、さらには日本シリーズも制している。
ダイエーとはあまりにも対照的な状況であったブルーウェーブはこの年、29失点を喫した試合を含め、実に4度もダイエー相手に20失点以上を喫して大敗している。対戦成績自体は11勝17敗と絶望的な差があったわけではないが、悪い意味で色々と嚙み合ってしまった結果といえるだろう。
また、当時の球界は反発係数が高いボール、いわゆる「ラビットボール」が使用されており、打高投低の傾向が強く出ていた時期でもある。現在は当時のボールほど反発係数は高くない上、投手のレベルも飛躍的に向上しているため、失点記録を更新することはかなり困難かもしれない。
当時のブルーウェーブと比較すると、19日終了時点でセリーグ3位につけ、チーム防御率(2.85、リーグ4位)、失点数(200点、リーグ3位)もまずまずの広島はそこまで悲観する必要はないだろう。どれだけ点を取られようが1敗は1敗と、メンタルを切り替えて次戦以降に臨めるかが大事になってきそうだ。