後半戦初戦は“裏天王山”に!? 横浜F・マリノス、史上初J2降格危機の行方は

柴田雅人 Masato Shibata

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■Jリーグ屈指の名門がまさかの事態に

サッカーJ1リーグに所属する横浜F・マリノスは、リーグ創設当初から参加している「オリジナル10」(現存するのは9クラブ)の一角を担うクラブ。Jリーグ屈指の名門だが、今季は深刻な不振に苦しんでいる。

マリノスは過去に優勝5回を誇り、近年も2019年、2022年にそれぞれJ1を制している。ただ、今季のリーグ戦では開幕4戦未勝利(1敗3分)と出遅れると、1勝を挟み11戦未勝利(9敗2分)と低迷。この間には監督交代という大ナタも振るわれたが、クラブ史上初の7連敗を喫している。

その後は2連勝と少し持ち直して前半戦を終えたが、順位は3勝5分10敗、勝ち点14で依然として最下位となっている。ここから逆襲して残留を果たせるかどうかは、前半戦に引き続き後半戦も大きなトピックとなっていくことは間違いない。

■目標となる「残留ライン」は?

J1残留に必要な勝ち点数、いわゆる「残留ライン」は各シーズンによってばらつきがあるが、直近5シーズンでは以下のような数字となっている。

2020年:新型コロナウイルスの影響で降格なし
2021年:勝ち点37(湘南ベルマーレ、7勝16分15敗、4クラブが降格)
2022年:勝ち点37(ガンバ大阪、9勝10分15敗、2クラブが降格、1クラブはJ1参入プレーオフの結果残留)
2023年:勝ち点33(柏レイソル、6勝15分13敗、1クラブが降格)
2024年:勝ち点41(柏レイソル、9勝14分15敗、3クラブが降格)

今季は下位3クラブが降格するレギュレーションとなっているが、複数クラブが降格となった2021、2022、2024年の結果を参考にすると、残留ラインは30点台後半になることが予想される。該当3シーズンの平均となる約38点が必要と仮定すると、現在勝ち点14のマリノスは後半戦で8勝、7勝3分、6勝6分といった具合で勝ち点24以上を稼ぐことが求められる計算になる。

前半戦から2倍近くの勝ち点を稼がなければならないことを考えると、引き分けでは良しとせずに勝ち切る姿勢をどこまで貫けるかがカギとなる。また、現在-8となっている得失点差で最後に泣かないためにも、チャンスがあれば複数得点を狙っていくことも重要になるだろう。

■後半戦初戦は激戦必至の“裏天王山”

残留争いを勝ち抜くためには勝ち点を積み上げることはもちろん、どのクラブから勝ち点を得るかも大きなポイントとなる。マリノスは後半戦のスタートから19位アルビレックス新潟(勝ち点16)、11位ファジアーノ岡山(同24)、18位FC東京(同19)、16位湘南ベルマーレ(同22)、17位横浜FC(同19)、14位名古屋グランパス(同23)、13位東京ヴェルディ(同24)と中位、下位クラブとの直接対決が続くが、この期間が残留争いの行方を大きく左右することは間違いない。

特に、後半戦初戦の対アルビレックス戦は勝てば最下位脱出、負ければ残留争いから大きく後退する“裏天王山”となる。お互いに相手を何としても蹴落とそうとして臨む一戦は、激戦必至の注目カードになるだろう。

■眠れるエースの目覚めも不可欠

近年のJ1では前半戦を終え勝ち点14だった2024年の京都サンガ、同じく勝ち点11にとどまっていた2022年のヴィッセル神戸など、不振に苦しみながらも最終的に残留を果たしたチームは少なくない。マリノスにとっては心強い前例といえるだろうが、この2チームに続けるかは得点源の選手が活躍できるか次第だ。

昨年のサンガはシーズン途中に補強したラファエル・エリアスが、15試合で11得点をマークする大活躍を見せた。2022年のヴィッセルもエース・大迫勇也が、シーズン終盤に行われたガンバ大阪との残留争い直接対決で2ゴールを挙げるなど勝負強さを発揮している。

マリノスは昨季まで2年連続でJ1得点王に輝いたアンデルソン・ロペスを擁しているが、ロペスは前半戦はわずか1ゴールに終わるなど沈黙している。エースの復調にかけるか、それとも新ストライカーの補強に打って出るか。いずれにせよ、得点源を確立することは必要不可欠だろう。

マリノスは「オリジナル10」の中では鹿島アントラーズと共に、過去一度もJ2降格経験がないクラブとして知られている。30年以上紡いできた歴史をこれからも繋げていけるのか、勝負の後半戦の戦いぶりには要注目だ。

柴田雅人 Masato Shibata

スポーティングニュース日本版スポーツコンテンツライター。福岡県出身。幼少期から相撲、野球、サッカーを中心に幅広くスポーツを観戦。大学卒業後からライター活動を開始し、主にスポーツ記事の企画立案、取材、執筆などに携わる。現在もスポーツ観戦が一番の趣味で、複数競技を同時に視聴することもしばしば。