■序盤から大きく黒星が先行
大相撲秋場所は17日、4日目の取組が行われた。各力士は徐々に明暗が分かれ始めているが、「暗」が色濃く出てしまっているのが東前頭10枚目の大栄翔だ。
今場所は初日の西前頭9枚目・藤ノ川戦は押し出しで勝利したものの、2日目からは東前頭11枚目・正代、西前頭8枚目・金峰山、東前頭9枚目・翠富士に相次いで敗北し3連敗。本場所で3連敗を喫したのは2024年春場所以来で、この時は6勝9敗で負け越している。
金峰山戦では立ち合いのど輪をはね除け右をのぞかせたまではよかったが、そこから足がついていかずに上手投げを食らい土俵に打ち付けられた大栄翔。首をかしげながら立ち上がる姿からは、先々場所までとはかけ離れたような相撲が続いていることへの苦悩がうかがえる。
■実力十分も故障の影響は甚大か
現在31歳の大栄翔は2012年初場所で初土俵を踏んだが、同場所から2025年夏場所までの約13年間、故障を理由とした休場はゼロ(2022年名古屋場所は新型コロナの影響で途中休場)。ただ頑丈なだけではなく、力強さと回転の速さを兼ね備えた突き押しを武器に、幕内在位55場所、三役在位23場所(関脇13場所、小結10場所)を記録している強豪力士の一人だ。
今年は西関脇で臨んだ初場所で11勝を挙げると、春場所、夏場所は東関脇としてそれぞれ9勝、10勝をマーク。大関昇進目安である「三役で直近3場所33勝以上」には満たなかったものの、名古屋場所以降での達成可能性は十分と期待されていた。
ところが、夏場所後の稽古で右ふくらはぎを痛め、名古屋場所直前に状態が悪化したことから同場所は全休することに。日本相撲協会が同場所前日に公表した診断書の内容が「右腓腹筋断裂で約2カ月の加療を要する見込み」というものだったことから、ファンの間では秋場所にも影響するのではという心配の声も少なくなかった。
同場所後の大栄翔は8月の夏巡業も全休を強いられると、9月上旬に関取衆との稽古を再開。少ない時間の中で懸命に調整を行い、今場所は患部にサポーターを着用した状態で初日から出場しているが、やはり故障や調整遅れの影響は大きいようだ。
また、大栄翔は先場所全休により東関脇から東前頭10枚目まで番付を落としたが、平幕10枚目以下に位置するのは2018年秋場所以来7年ぶりのこと。上位に定着していた故障前とは取組時間などが大きく異なるため、まだアジャストするのに苦労している部分もあるかもしれない。
■尊富士と同じパターンに陥るリスクも?
大栄翔は4日目終了時点では、5日目以降も出場を継続する見込みとなっている。場所はまだ序盤の段階のため巻き返しは十分可能ではあるが、数日中に状況が好転しない場合は難しい判断を迫られそうだ。
大栄翔が今場所在位している平幕は、東が18枚目、西が17枚目までとなっている。番付は他力士との兼ね合いはあるものの、基本的には勝ち越し1つにつき1枚、負け越し1つにつき1枚下がるとされている。そのため、幕尻までまだ7~8枚余裕がある大栄翔は仮に負け越しでも、よほど数字が悪くなければ十両には落ちない見込みだ。
ただ、現段階で患部の状況が思わしくなく、我慢して土俵に上がっているような状態ならば、十両転落も覚悟の上で途中休場するのも一手と言える。強行出場を続けるも結局途中休場に追い込まれた上、強行出場したせいで次場所以降にも影響が出るという最悪のパターンが想定されるからだ。
直近では名古屋場所6日目に右腕を負傷した東前頭6枚目(当時)・尊富士が、7日目以降も出場を継続するも苦戦が続き、結果的に13日目から途中休場。場所後に手術を受けたが秋場所は全休見込みで、次の九州場所では十両転落が避けられない状況となっている。大栄翔も負傷箇所は違うが、場合によっては尊富士と同じような苦境に陥る可能性も決してゼロではないだろう。
前出の実績を考えると、平幕中位で3連敗を喫するような力士ではない大栄翔。本調子ではないことは明白だが、出場を続行するにしろ、途中休場を選択するにしろ、苦境から脱出できることを多くのファンが願っている。
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