■場所前調整は遅れ気味?
5月に行われた大相撲夏場所では、大関・大の里が14勝1敗で2場所連続優勝を果たした。同場所後に第75代横綱へと昇進し、来たる名古屋場所では2021年9月場所の照ノ富士(現伊勢ケ濱親方)以来となる新横綱としての優勝が期待されている。
ただ、7月13日の初日が目前に迫る中、いくつか不安なニュースも出てきている。同7日には数日前に左足親指を痛めていた先輩横綱・豊昇龍と、出稽古先で三番稽古を行うも1勝3敗と負け越し。その他関取衆との対戦を含めても7勝7敗と今一つで、本人も内容に不満足な旨を口にしたという。
大の里は夏場所前も稽古総見で精彩を欠くなど調整遅れが不安視されたが、本場所ではそれが嘘のような無双ぶりを見せつけている。名古屋場所でもその再現といきたいところだが、これまでの相性を考えるとあまり楽観視はできないかもしれない。
■過去2年は勝ち越すものの苦戦
幕下10枚目格付け出しとして2023年夏場所でデビューした大の里は、2023年、2024年の2度名古屋場所を経験している。東幕下4枚目として臨んだ2023年は4勝3敗で勝ち越し、場所後に新十両へ昇進した。
その星取の内訳をみると、1番相撲から連勝と順調に滑り出したものの、3、4番相撲では連敗を喫し2勝2敗に。その後5番相撲で勝利し勝ち越しにリーチをかけるも、6番相撲に敗れ再び星が五分に戻り、最後の7戦相撲でようやく勝ち越しとかなりの苦戦を強いられている。当時の報道によると、本人としても完全に想定外の流れだったようで、3勝3敗になった後は食事も喉を通らないほどの重圧を感じていたという。
翌2024年の名古屋場所では、1年前から番付を大きく上げ西関脇となった大の里。前場所では自身初の優勝(12勝3敗)を記録するなど勢いを持って本場所に臨んだが、結果は9勝6敗と優勝はおろか2ケタにも届かず。初日から10連勝していた照ノ富士を11日目に破ったことなどが評価され殊勲賞は受賞したが、勝敗自体は物足りない結果に終わっている。
■思わぬ形で弱点克服へ?
名古屋場所はかつて「熱帯場所」、「南洋場所」という異名で呼ばれたほど暑さが厳しい場所として知られ、コンディション調整に苦労している力士は少なくない。大の里も暑さはあまり得意ではないそうだが、これも今一つ力が発揮できていない要因と考えられる。
ただ、大の里をはじめとした暑さが不得手な力士にとって、今回の名古屋場所はこれまでとは一味違う場所になる可能性がある。というのも、1965年から2024年まで愛知県体育館(ドルフィンズアリーナ)で開催されていた同場所は、今年から愛知国際アリーナ(IGアリーナ)へ会場が変更され行われる。場内には最新鋭の空調が完備されているそうで、非常に心強い追い風となりそうだ。
また、会場の移転により、支度部屋や土俵上などの景色もこれまでとはガラッと変わることになる。2年連続で思うような成績を残せていないという嫌なイメージも多少は払しょくできるのではないだろうか。
しかし、こうした外的要因以上に大事なのはもちろん、優勝を勝ち取り横綱の責務を果たすという気持ちであることは間違いない。場所前の報道によると、本人は名古屋場所で好成績を残すことで自身の強さを証明したいと意気込んでいるというが、強いモチベーションがあれば結果もついてくるのではないだろうか。
年6場所制となった1958年以降では最速となる、初土俵から所要13場所での横綱昇進を果たした大の里。過去苦手としてきた名古屋場所で、新横綱・新会場最初の優勝を果たすことはできるだろうか。