横綱・豊昇龍、秋場所初日は黒星もあり得た? 「並の力士なら食ってた」中継解説が指摘した勝負の分かれ目は

柴田雅人 Masato Shibata

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時事

■“お得意様”を下し白星発進に成功

大相撲秋場所は14日、初日の取組が行われた。結び前に登場した西横綱・豊昇龍は、東前頭筆頭・玉鷲を渡し込みで下して白星発進を決めた。

豊昇龍は立ち合い左足から鋭く踏み込むと、玉鷲の顎付近を右手で押し上体を起こそうとする。この直後、一瞬左足を滑らせ体勢が崩れかけたが、前傾姿勢のまま左足を大きく前に出してこらえると、右を差しつつ玉鷲を土俵際へ追い込んだ。これを受けた玉鷲は逆転の突き落としを狙ったが、豊昇龍は左手で玉鷲の右足を抱えながら体を預け、先に玉鷲を地面につかせた。

豊昇龍にとって玉鷲は、過去10勝3敗と大きく白星が先行している相手の一人。今場所も相性の良さを発揮した形となったが、この日NHK大相撲中継で正面解説を務めた琴風浩一氏(元大関、前尾車親方)、向正面解説の舞の海秀平氏(元小結)によると決して簡単な相撲ではなかったようだ。

■判断次第では逆転負けの可能性が?

今回の豊昇龍の一番について両氏が着目したのは、玉鷲に突き落としを狙われた豊昇龍が瞬時に渡し込みを選択した点。琴風氏は「この人(玉鷲)は思い切った突き落としがあるんですよ。横綱の運動神経の良さで、渡し込みにいったのがよかったですね」と評しつつ、「左から玉鷲の右足を抱えてなかったら、渡し込みにいってなかったら危なかったですよ。最初の突き落としで、並の力士なら食ってましたね」と指摘。豊昇龍以外の力士なら、突き落としを食らって逆転負けを喫していた可能性も少なくはない相撲内容だったと述べた。

また、舞の海氏も「今琴風さんもおっしゃいましたけど、力士によっては突き落とされた時に、そのまま手を(地面に)ついてしまう力士もいるんですよね。(豊昇龍は)突き落とされると同時に渡し込みにいってますから、それで地面につくのが少し遅れますよね」と同調。地面に体が思い切り打ちつけられることを恐れず、最後まで相手を攻めることを貫いたことが勝負の分かれ目になったとしている。

■“天敵”相手にも内容ある相撲見せられるか

2025年初場所後に横綱へ昇進した豊昇龍は、今場所が横綱昇進4場所目になるが、ここまでの3場所では横綱としての初優勝はまだ果たせていない。7月の名古屋場所では左足親指の故障により5日目から途中休場し、幕内ではキャリアワーストとなる1勝(4敗10休)に終わる屈辱を味わっている。今場所の初日も決して完勝というわけではなかったが、持ち前の相撲勘の良さに救われ白星を拾うという形になった。とにもかくにも結果が求められる状況なだけに、曲がりなりにも白星スタートに成功したことは及第点といえるだろう。

また、一瞬足を滑らせる場面はあったものの、立ち合いでは力強く左足を踏み込めており、舞の海氏からも「突き刺さるような厳しい立ち合いでしたね」との評価を得ている。初日の一番を見る限り、左足親指の状態は現状では問題なさそうだ。

豊昇龍は15日に行われる2日目は、東小結・高安と対戦する。名古屋場所では外掛けで勝利したが、通算では3勝10敗(不戦勝1、不戦敗1含む)と大きく黒星が先行している“天敵”の一人だ。過去の敗戦では立ち合い左を差されて組み止められたところから、無理に相手を攻めようとして墓穴を掘るという相撲内容が散見される。強引な相撲には故障が悪化するリスクもあるだけに、膠着状態になっても勝負を焦らずに慎重に攻めていけるかがポイントになりそうだ。

初日は中継解説陣にも評価される相撲内容だった豊昇龍だが、この白星で得た勢いを2日目以降も維持していくことはできるだろうか。

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柴田雅人 Masato Shibata

スポーティングニュース日本版スポーツコンテンツライター。福岡県出身。幼少期から相撲、野球、サッカーを中心に幅広くスポーツを観戦。大学卒業後からライター活動を開始し、主にスポーツ記事の企画立案、取材、執筆などに携わる。現在もスポーツ観戦が一番の趣味で、複数競技を同時に視聴することもしばしば。