■1年ぶりに十両の土俵へ上がるも…
大相撲名古屋場所は14日、2日目の取組が行われた。横綱・豊昇龍が早くも今場所初黒星を喫したことが話題となったが、その豊昇龍と同様に苦杯を喫したのが元大関で西幕下筆頭の朝乃山だ。
1勝0敗の朝乃山はこの日、1勝0敗の十両・荒篤山と対戦。昨年名古屋場所4日目に「左膝前十字靱帯断裂、左膝内側側副靱帯損傷、左大腿骨骨挫傷」の大怪我を負い、三段目まで落ちた番付を懸命に上げている中、約1年ぶりとなる十両での相撲となった。
ただ、節目の一番は立ち合いから相手の圧力に押し込まれ後退すると、押し返そうとしたところで引き落としを食らってあっけなく土俵に手をついた。反撃のタイミングで少し足が滑るという不運もあったが、仮に滑ってなくても勝機は薄いと感じさせるほどの力負けで、取組後の報道では本人も完敗を認めたことが伝えられている。
■前日は勝利も内容には不安
今回の敗戦で1勝1敗となった朝乃山だが、今場所はまだ5番を残しており、十両復帰の可能性が出てくる勝ち越しをクリアする余地はある。ただ、初日の相撲内容も含めると勝ち越しはそう簡単な話ではなさそうな上、仮に十両に戻れたとしても苦労しそうな雰囲気が出てきている。
朝乃山は13日に行われた初日の取組で、西幕下2枚目の夢道鵬と対戦。すくい投げで勝利し今場所初白星をマークしたが、内容は薄氷を踏むような相撲だった。朝乃山は立ち合いすぐに右を差したが、相手にも右を差された上に左上手も許しており、そこから左上手投げをモロに食らう。体勢を崩して前に落ちかけながらも、右のすくい投げを合わせたことで辛うじて相手の方が先に倒れたが、勝敗がどちらに転んでもおかしくはなかったといえるだろう。
夢道鵬は新十両として臨んだ先場所以外に関取経験はなく、同場所では5勝10敗と壁に跳ね返されている。2日目に敗れた荒篤山も今場所を含めて幕内2場所、十両9場所と経験は浅い部類の力士だ。そのような相手にほぼ互角の勝負を演じているようでは、両名よりも経験豊富な力士がひしめき合う十両、幕内の舞台ではうまく戦っていけないことは明白だろう。
■先場所の再現を果たせるか?
朝乃山は今年3月場所で復帰して以降、昨年7月に大怪我を負った左膝はもちろん、同年4月に痛めた右膝にも分厚いテーピングを施して土俵に上がっている。可能な限り古傷をケアしていることが十分にうかがえるが、両日ともに立ち合い相手を押しきれていないこと、相手の攻めに対して今一つ踏ん張りが効いていないことを考えると、コンディションが万全とは言い難い状況であることは確かだろう。本調子ならば幕下クラスの力士は圧倒できるほどの強さを誇るだけに、本人としては内心歯がゆい思いを抱いているかもしれない。
ただ、初日、2日目と連日相撲を取ったことで、15日の3日目、16日の4日目は対戦が組まれないことが濃厚。この期間を利用して心身のコンディションを整え直すことができれば、3番相撲以降に調子を持ち直す可能性はあるのではないか。
朝乃山は西幕下14枚目で臨んだ先場所、2番相撲で黒星を喫し、達成なら十両復帰が濃厚となっていた7戦全勝の可能性が早々に潰えた。しかし、3番相撲からは5連勝をマークするなど。気持ちを切り替えて成績を持ち直している。先場所の再現を果たせるかどうかは大きな注目ポイントといえそうだ。
2019年夏場所で自身初、そして令和初の優勝を果たして一躍有名になった朝乃山。そこからは大関昇進、不祥事、大怪我など紆余曲折の土俵人生を送っているが、関取復帰を願う多くのファンの期待に応えることはできるだろうか。