“大の里キラー”の平幕・王鵬、なぜ勝ち星が伸びない?「いっつもそう…」身内からも指摘されている課題は

柴田雅人 Masato Shibata

“大の里キラー”の平幕・王鵬、なぜ勝ち星が伸びない?「いっつもそう…」身内からも指摘されている課題は image

時事

■横綱・大の里相手には強いが…

7月に行われた名古屋場所終了時点で、今年最も幕内で白星を挙げているのは横綱・大の里だ。大関昇進2場所目の初場所で10勝を挙げると、翌春場所で12勝、続く夏場所は14勝を記録し2場所連続優勝を達成した。名古屋場所は金星を4個献上するなど苦しみながらも、新横綱としては及第点といえる11勝をマークし、4場所計47勝としている。

その大の里と今年4回対戦し、3回も土をつけた力士がいる。それが平幕・王鵬だ。対大の里は2024年まで過去3戦全敗だったが、今年は初場所で初勝利を挙げると、続く春場所でも勝利し連勝。夏場所では敗北したが、名古屋場所では今年3勝目であり、通算3個目となる金星を奪った。9月に予定される秋場所以降も、“大の里キラー”としての活躍が大いに期待されるところだ。

一方、現在の角界では最強と言える大の里相手に好相性を発揮しながら、成績は今一つの数字にとどまっている。初場所で優勝同点となる12勝を挙げ新三役・新関脇に昇進したまではよかったが、春場所からは6勝、7勝、7勝と3場所連続で負け越し。秋場所ではまだ平幕上位は維持できる見込みとはいえ、もったいない状況が続いていることは確かだろう。

■身内からも指摘される課題は

現在25歳の王鵬は祖父に第48代横綱・大鵬、父に元関脇・貴闘力氏を持つサラブレッド力士として、2018年初場所のデビュー当時から大きな期待をかけられている。初土俵から3年で新十両、4年で新入幕、7年で新三役と着実に出世してはいるものの、豊昇龍・大の里の2横綱や大関・琴櫻といった同世代力士には遅れをとっている現状だ。

安定した成績を継続できていない理由としては、スロースターターの傾向があることが挙げられる。今年の4場所を見ると、初場所では初日~中日の前半戦は2敗、9日~千秋楽の後半戦は1敗だった。一方、残り3場所は春場所が前半5敗・後半4敗、夏場所が同5敗・3敗、名古屋場所が同6敗・2敗と、いずれも前半戦で黒星がかさみ最終成績にも響いている。

この点は父親である貴闘力氏も懸念しているようで、2025年7月29日に自身の公式YouTubeチャンネルに投稿した動画内でも「いっつもそうだね。なんか最後に帳尻合わせて、ほんっとに…」と苦笑交じりにコメントしている。他にも課題は様々あるが、まずは身内からも指摘されているスロースターターを改善していくことが重要ではないだろうか。

■対役力士が課題克服のポイントに

王鵬は平幕上位として秋場所に臨むことが濃厚だが、この地位は一般的に前半戦は役力士との対戦が組まれることがほとんど。同場所は2横綱(豊昇龍・大の里)、1大関(琴櫻)、2関脇(若隆景・霧島)、2小結(高安・安青錦)の陣容になると予想されているが、彼ら7名とどう渡り合うかがスロースターター克服を左右するといえる。特に、名古屋場所終了時点で通算3勝7敗の琴櫻、同1勝5敗の若隆景、同0勝6敗の高安の3名にはカモにされている節があるため、対大の里のように逆襲を見せていきたいところだ。

王鵬は時折引き癖が顔を出すことも改善点とされているが、名古屋場所の大の里戦では立ち合いから押し込まれるも引きは我慢し、前傾姿勢のまま押し返し続けたことで逆に相手を引かせ勝利した。他の役力士に対しても、劣勢に陥ったとしても前に出る意識を持ちづつけることで勝機が見えてくるかもしれない。

王鵬は現在行われている夏巡業では、関取衆の申し合いに積極的に参加するなどして秋場所への準備を進めているという。同場所では連続負け越しをストップして三役復帰、そしてその先の地位も見えるような好成績を期待したいところだ。

✍️この記事はいかがでしたか? 読後のご意見・ご感想をぜひお聞かせください

柴田雅人 Masato Shibata

スポーティングニュース日本版スポーツコンテンツライター。福岡県出身。幼少期から相撲、野球、サッカーを中心に幅広くスポーツを観戦。大学卒業後からライター活動を開始し、主にスポーツ記事の企画立案、取材、執筆などに携わる。現在もスポーツ観戦が一番の趣味で、複数競技を同時に視聴することもしばしば。